最上の君主に対しては、下にいる人民はただ君主が存在することだけを知っているだけである。その次の位の君主に対しては、人民は親しみ、その君主を褒め称える。さらにその次の段階の君主に対しては人民は恐れを抱く。さらに次の段階の君主に対しては、人民は侮り心を持つ。君主に信がたりないと人民も信用しない。思慮を巡らせて言葉を尊ばなければならない。そうなれば人民は功績を為し、事を成し遂げても、自分達自身の力でそうなったのだと思うのである。

Pure manners.

To the superior King, people know only the presence of him. To next status King , people are familiar and higly praise him. And to next status King, people fear him. To the last status King, people feel ridicule him. If the King has few trust people never believe him. The king must value thoughtful verbs. Then people think things done by themselves, if some achivement comes.

人民にとってはどのような為政者が理想的なのかを述べた意。為政者のタイプを上から順に四通り挙げ、人民にその存在を忘れさせるような為政者が理想的だと説く。タイトルの「淳風」とは、淳朴な風俗の意で、この章の内容をよく表している。
「太上は下之有るを知るのみ」。人民によって最上の為政者というのは、無為の政治を行っているため、人民がその存在を一切恩義にも負担にも思わず、ただ存在していることだけを知っているような、そんな人物がよいのだということ。
「其の次は之に親しみ之を誉む」。その次のランクの為政者は、人民に仁政を為し、人民から親しみを持たれたり、誉め称えられたりする人物であるということ。「太上」の為政者が「無為」という、人民に対して何ら直接的な行為を為さないのに比して、「其の次」の為政者は仁政という行為を為すという点で「其の次」となるのである。儒家的な為政者を想起しているのかもしれない。「其の次は之を畏れ」、三番目のランクの為政者は、厳重な法令をしていて権力をふりかざす政治を行い、人民を畏れさせるような人物である、ということ。これらは法家的な為政者を想起しているのかもしれない。
「其の次は之を侮る」。一番下のランクの為政者は、まずい政治ばかり行って、人民から馬鹿にされ軽んじられるような人物である、ということ。
「信足らざれば、不信有り」。初めの「信」は為政者の信のことで、後の「信」は人民の信のこと。すなわち、為政者に信義・誠実さが足りないと、人民からは信頼されない、ということ。
「功成り事遂げて、百姓皆我自ら然りと謂えり」。主語は百姓。人民が何か事を為し遂げても、皆自分達自身で成し遂げたと言うようなのが良い、ということ。ここの主語を「太上」の為政者とし、「最上の為政者が偉大な業績を成し遂げても、人民が自分たちで成し遂げたと思うような政治がよい」とする説もある。

明治書院 老子より