子曰く、道に聴きて塗(みち)に説くは、徳を之れ棄つるなり、と。

 

 

孔子が言われる。いま、どこかへ行く道の途中で善言を聞いても、すぐ行き先の路上で、会う人にそれを話して、そのまま忘れてしまっては、心に養うこともなく、身にもつかず、これはまったく自ら徳を捨てるというものだ。

 

この章は「道聴塗説」という諺の出典である。この諺は、「人の言葉をすぐ鵜呑みにして、まるで自分の考えのようにすぐ他人に説く」ことを言い、曾子も「習わざるを伝えしか」と、自分を反省する要素の一つとしている。荀子も「小人の学は耳より入りて口より出づ。口耳の間才(わず)かに四寸のみ、焉んぞ以て七尺の躰を美とするに足らんや(つまらぬ人の学問は、はじめは君子と同様に耳から入ってもすぐに口に出して人に教える。耳と口との間はたった四寸しかない。四寸ばかりの所を学問が通過しただけでは、どうしてそれで七尺もの身体を美しく立派なものにできようか)」と述べ、このような聞きかじりの学問を「口耳(こうじ)の学」という。

 

 

 

明治書院 論語より


道聴塗説 論語 孔子