孔子曰く、君子に三戒有り。少き時は、血気未だ定まらず、是を戒むる色に在り。其の壮なるに及びてや、血気方に剛なり、之を戒むる闘に在り。其の老ゆるに及びてや、血気既に衰う、之を戒むる得るに在り、と。

孔子が言われる、君子たらんとする者に、それぞれの時期に当たって警戒すべき三つのことがある。青年期は血気が定まらないときで、情が激しく、なかでも、男女の色情について十分戒めなければならない。三十、四十の壮年期は血気が盛んで、自我も強い反面、自分を主張しすぎがちだから、他と争い闘うことを戒めなければならない。老年期になると、血気はもう衰え、安逸を貪るようになって、欲得が強くなるから、貪欲について警戒しなくてはならない。

「少」とは三十歳以下、「壮」とは三十以後四十まで、「老」は五十歳以上を言う。宋代の学者范祖兎は次のように言う。人間には血気と志気があり、普通の人と優れた人が同じであるのは血気であり、異なるのは志気であると。血気は若い時には定まらず、壮年になって強く、老いると衰えるものである。だが色欲を抑え、争うことを戒め、貪欲を慎むのは志気であって、君子は志気を養うことができるので血気に動かされることがないと。傾聴すべき見解である。

明治書院 論語 より

君子に三戒有り 論語 孔子