子曰く、仁遠からんや。我仁を欲すれば、斯に仁至る、と。

孔子が言われる、仁は人から遠く離れた存在であろうか。いや決して人から遠い存在ではない。我々が、仁でありたいと思えば、その瞬間、直ちに仁はやってくるものだ。

仁は孔子学団の目指す最高の道徳律であり、雍也編にも、「顔回はいく月もその心が仁に違うことがないが、他の人は日に一度、月に一度、たまに仁に至るだけだ(回や其の心三月仁に違わず。其の余は則ち日月に至るのみ)」と孔子が述べた章がある。だから弟子たちは仁にはとても至り得ないと思っていたのであろう。そこで孔子は、「仁に至ることができるか否か」は心の持ち方次第なのだと言う。仁の心は誰にでも本来備わっているもので、その実現は心からそうありたいと思うかどうかにかかっていると言うのである。

明治書院 論語より


仁遠からんや 論語 孔子