子、怪・力・乱・神を語らず。

孔子は、怪談や、武勇伝や、乱倫背徳のことや、鬼神霊験などについては、あまり語られるところがなかった。

宋代の学者、謝良佐はこの章を解説して「聖人は常(当たり前のこと)を語りて怪を語らず、徳(道徳)を語りて力を語らず、治(平和)を語りて乱を語らず、人(人間)を語りて神を語らず」と言う。孔子の理想はあくまでも普通の庶民が道徳を守り、平和に生活できる社会を実現することであって、迷信や武力や妖怪変化の世界は孔子の関心外のことであった。そこに儒家思想の特色があった。軽々しく怪・力・乱・神を口にしなかったのはそのためである。

明治書院 論語より


怪・力・乱・神 論語 孔子