子曰く、君子は博く文を学び、之を約するに礼を以てせば、亦以て畔かざるべきか、と。

孔子が言われる、学者は幅の広い学問をして教養を豊かにするとともに、これを集約して実行するのに、礼すなわち、正しい生活様式を基準としていくなら、道にそむくことはあるまいなあ。

この章から「博文約礼」の言葉が生まれているが、明治時代の宰相、伊藤博文の名もここから取ったものであろう。「博文」とは広く学問をして知識を豊かにし教養を身につけることだが、いかに広い知識があっても行動が正しくなければ、人間としては立派ではない。孔子の理想は君子の育成であり、そのための方法として約礼が重視されている。「約礼」とは礼で縛る(約束の約)ことで、社会的規範(礼)で自分自身の行為を律する(約)ことであり、顔淵編では「克己復礼(自分の我欲に打ち克ち礼を履行する)」とも言い、さらに具体的には礼に反する事は見ず、聞かず、言わず、行わないことであると述べられている。

明治書院 論語より


君子は博く文を学ぶ 論語 孔子