子游孝を問う。子曰く、今の孝は、是能く養うことを謂う。犬馬に至るまで、皆能く養うこと有り、敬せずんば、何を以て別たんや、と。

子游が孝について質問した。孔子が言われるには、この頃の孝は、よく親を養えばよいと言うことのようだ。しかし、犬や馬でも、飼う以上は人は犬馬をよく養っているではないか。親を尊敬する心がなかったら、なんで親と犬馬とを区別しようぞ。(親に対しては愛敬の心を持って尊ぶことが大切で、よく養うだけでは親不孝ともなるのだ。)

今日でも、「ぼくは田舎の両親には毎月仕送りしているから」などと言って親孝行を任じている人は多い。このようなことは当然のことで、それだけでは犬や猫を養うのと変わりがないというわけである。親の気持ちを大事にすることを、「志を養う」といい、そのことが親を心から敬愛することになる。子游は孔子より45歳若い弟子で、姓は言、名は偃、孔子の10人の高弟(四科十哲と言い、四科とは徳行・言語・政事・文学を言う)の一人とされるが、ひょっとすると親に対する態度に誠意を欠くことがあったのかもしれない。

明治書院 論語 より

今の孝は是能く養うを謂う 論語 孔子