子曰く、政を為すに徳を以てするは、譬えば北辰の其の所に居て、衆星の之に共するが如し、と。

孔子が言われる、政治をするのに道徳をもってすると、天下の人心がその為政者に帰服することは、例えてみると、北極星が一定の場所にいるのに、多くの星が北極星を中心として、それを仰ぎ抱くようにしているようなものだ。

孔子の生きていた春秋時代は、周王朝の権威が衰え、諸侯は富国強兵策に夢中であり、魯の国でも三桓と言われる三人の貴族が政治の実権を握り、主君を無視する下剋上の時代であった。一方、重税や打ち続く戦争などの為に民衆は苦しい生活にあえいでいた。孔子はこのような社会を憂え、何とか君主の道徳性により人民が君主を心から信頼する政治、徳治政治の実現を願っていた。この章は北極星を中心に天体が美しく運行していることを例にとって、自分の願いを述べたものであり、「徳治政治」の宣言ともいえる章である。

明治書院 論語 より

政を為すに徳を以てす 論語 孔子